天満つる明けの明星を君に②

早朝、軽く身体を動かすために庭に出て木刀の素振りをした後、一緒に朝餉を作ってふたりと一匹で食卓についた。

ぽんは雑食でなんでも食べるため、山を少し歩いてどんぐりや木の実を集めてそれを齧っているのを見ながら、天満はぽんに訊ねた。


「で、お嬢さんをうちで預かるっていう話だけど、種族は?」


「鬼でやす」


「え、鬼なの?まさかと思うけど、人を食う系じゃ…」


「食わねえっす!あいつは…あいつは臆病で穏やかで…可愛い娘っ子でやす」


「なるほど。簡単でいいんだけど、うちで預かるなら経緯を…」


ぽんは木の実が入った碗から顔を上げると、少し途方に暮れた顔をした。

…まず狸の妖が鬼の妖を気遣っている時点で違和感を感じる。

位で言えば鬼族の方が強くて当然だが、ぽんは明らかにその鬼の娘を庇おうとしている。


「その…娘っ子はおらの幼馴染でやす。親が居なくて泣いてたところをおらのとっちゃんが拾ってきて…」


「うん、それで?」


「それで…あいつ可愛いからちょっと厄介な奴に気に入られちまって…このままじゃ大変なことになりそうなんでやす…」


「天ちゃん、女の子の危機だよ!助けてあげようよ!」


「いや、助けるのは当然だとしても、朔兄にちゃんと説明しないとと思って。まあでも経緯は分かったから安心して」


ほっとした顔をしたぽんの頭を撫でた天満は、その後後片付けをして腰に手をあてると、暁の前で膝を折った。


「じゃあ僕のお嫁さんが使ってたものを見てもらおうかな。気に入るといいんだけど」


「見る!どんなのがあるかなっ」


わくわくして飛び跳ねている暁を、雛菊が愛用していた鏡台の前に連れて行った。

手拭いで曇っている鏡を磨き、正座をして心を鎮めた。

暁も同じように深呼吸をして、天満に促されて引き出しに手をかけた。