同居って。


誰かもわからない、赤の他人と?


無理だよ…。



「音。そう言わずにさ、お願いだよ」



「音ちゃん。もうあちらには了解を得てもらってるの」



パパとママ、ふたりで泣きつくのはやめてほしい。



わたしが納得しないとパパたちが困るってもちろんわかっているんだけど。




「でも、今までも長く帰ってこないときあったよ?それで同居って、話が飛躍しすぎている気がするの」



そこが引っかかる。

なにか断れない理由でもあったのかな……?


ふたりに尋ねると、パパは苦い表情で「音、勘づいたか」と言った。


やっぱりなにかあったみたい。



「実はその友達は、有名な医者でね。

あちらも忙しくて、なかなか家に帰ることが出来ていないそうなんだ。
うちのようにお手伝いさんはいないようだし」


そうなんだ……。


わたしと似たような境遇、といっても、家に誰もいないんだったら、きっとわたしより寂しい。


「うちの海外行きが決まって、娘が心配だと相談したんだ。
そうしたら、彼は『よかったら半年間、音羽ちゃんの話し相手にでも、うちの子を七瀬家へ行かせようか』と言ってくれたんだよ」



そういうことだったのか……。


うちの家には人がたくさんいるけれど、みんなお仕事に忙しくて、わたしの話をゆっくり聞いてくれる余裕なんてない。


話し相手、か。

フラットに考えたら、それほど気に病むことでもない気がしてきたよ。







「わかった。その人と半年間、頑張るから、パパ達は安心して行ってきて」