話している最中に、石川翠は涙をこぼしていた。藍の胸に痛みが走る。愛する人を失った痛みは計り知れない。

「……死因は何だったんですか?」

藍が訊ねると、石川翠は「争った形跡もなく、事件性はないため解剖は必要ないと言われました……」とまた涙をこぼした。

「日本の解剖率は先進国の中でも最下位。解剖が行われるのは、事件性があると判断されたご遺体だけですからね……」

日本の闇ですよ、と監察医の田中聖(たなかひじり)が呟く。藍も頷いていた。

「僕は、茜がなぜ死んだのかを知りたいんです!もしかしたら、病院のミスかもしれませんし……」

「病院のミス?」

藍が訊ねると、石川茜は三年前に乳がんを患い治療をしたそうだ。医師からはステージは一のため、治療をすれば問題ないと言われたらしい。

「茜は乳がんの治療が終わっても、定期的に検診を受けていました。その時に腫瘍が発見されなかったのかもしれません。ほら、たまにあるじゃないですか。マンモグラフィーで見つからなかったけど、超音波検査をしたら見つかったって……」