「……そうですか……」

うつむく石川翠を見て、藍の胸が痛む。

「死因を特定することができず、申し訳ありません」

藍が頭を下げると、大河たちも揃って頭を下げる。石川翠は顔を上げ、泣きながら言った。

「茜のことを、いろいろ調べてくれてありがとうございました。茜も、これだけ調べてもらって幸せだと思います。僕は茜と愛し合えて幸せでした。この愛に後悔はありません。……本当に、ありがとうございます」

石川翠は何度も頭を下げ、泣きながら帰っていった。藍は一人それを見送る。見送らせてほしいと正人たちに頼んだのだ。

石川翠の乗った車が研究所から離れていく。その時見えた横顔はとても悲しげで、藍は悲しみが込み上げてきた。

もっと法医学が発展していれば、もっと自分に知識があれば、石川翠の心を救えたのかもしれない。

「……ごめんなさい……」

そう藍が呟いた刹那、藍の目から涙がこぼれ落ちる。それは止まることを知らず、藍はその場にしゃがみ込んだ。