「なずな、そろそろ行こう!」


なずなを呼ぶ声が聞こえた。


この声が聞こえたら、なずなは風に攫われてしまったみたいに僕の前から消えてしまう。


「分かってる!……じゃあな、せり」


温もりが、離れていく。


行かないで、という言葉は君には届かない。


それは僕の声が、君には聞こえない声だから。


僕の足では、君に追いつくことができないから。








きっと、僕がネコだから。