そして数分後。スマホがあたしを呼んだ。

飛びつくようにして画面にかじりつくと、高岡からのメッセージを知らせてくれている。

『おはよー。気持ちよく二度寝してたのに起こすなよー』

高岡が返事をくれたことに頬を緩ませながらメッセージ画面を開くと、そんな言葉とともに、『もっともふもふさせて…』という猫のかわいいスタンプが一緒に送られてきていた。

「か、かわいいんですけど……!」

普段の高岡からは想像できないスタンプに悶えたあたしはベッドの上で足をジタバタさせる。

高岡はカッコよくて、話していると楽しくてモテる、バスケ部のエースだ。
それに対して、あたしは特に目立ちもしないチクチク手芸することだけが趣味の地味子。

最初こそは、どこに行っても目立って人気者の高岡のことがすごく苦手だったけれど、今では高岡とこうやってメッセージを送り合える状況が幸せでたまらなかったりする。

まぁつまりは、高岡はあたしの好きな人だ。

『ごめんね。よしよし』というほっこりスタンプを返すと、すぐに『起床!』という勢いのあるスタンプとともに返信がきた。

『なんでポッキーにおめでとう?』

やっぱりそうくるよね。
気にして突っ込んでくれたことにスキップしそうな気分になりながら、文字を打つ。

『プレッツェルとチョコレートのちょうどいいバランスがおめでたくない?』

高岡みたいで!

『あと、細く見えて芯がしっかりしてる感じとか、パッと見は甘く見えるのに甘すぎない感じもいいよね』

『確かに。語るね(笑)』

そうですね。高岡のことをポッキーに例えて語ってるからね!

『でね、この世に生まれてきてくれてありがとう、って思うおめでたい日だなぁと』

『何それ(笑)ポッキーへの愛情、半端ねえな(笑)』

……うん、そうだよ。高岡のことが大好きな気持ちが半端ないの。生まれてきてくれて、こんなあたしと出会ってくれてありがとうね。

心の中ではそんな告白をしても、現実にはとうていできないから、あたしは『へへっ』と猫が照れポーズをするスタンプを押した。

それから少しだけおしゃべりをして、『今日も1日、いい休日を過ごそうね!』とお互いに言い合ってメッセージを終えた。

本当は今日という日に高岡に会いたかった。
でも、単なるクラスメートという関係でしかないあたしにはそんな権利はなく、こうやってメッセージを送ることしかできないのだ。

高岡は今日、誰とどんなふうに過ごすのかな……と考えると、切ない気持ちになった。