「俺の分は、ぶつけて壊しちまったようだ、電波が出ているかどうかも分からん。当然GPSなんてないしなあ。まあ、帰還予定時刻を過ぎて通信も途絶えたら、救援隊が捜索に出動してくれるがな」

「そうですね。真美さんと健一君が必ず助けを呼んできてくれるはず。あの2人なら、きっと中生代エレベーター基地に自力で戻ってますよ」

 セラミックと松上晴人は、現時点で残された装備を再確認した。基本ダイブは半日間で、ジュラ紀に寝泊まりは想定していないので必要最低限だ。

 武器はナイフ以外ではセラミック用の89式小銃が1丁で、残弾は20発弾倉に11発のみ。

 食料はランチョンミート缶1個にレトルトカレー1袋にビスケットバー3個とカップ麺1個、それにチョコレートとキャンディ少々。

 水は500mlペットボトル入りが1本だけだが、豊富な雨水を煮沸すれば何とかなりそう。

 救急キットの中身は包帯、滅菌ガーゼ、三角巾、絆創膏、サージカルテープ、ハサミ、ポイズンリムーバー、あとはニトリル手袋だけ。エマージェンシーブランケットも含めて殆ど使ってしまった。医薬品は手持ちの消毒薬と痛み止めの錠剤、各種軟膏ぐらいしか持ってきていないのだ。

 残りは着替えの類いで、セラミックは松上の下着を掴み取ってしまったが、すぐ元に戻した。そして軽く溜め息をついて、洞窟の外を焚き火越しに見た。

「う~ん、あと何時間、いや何日ここに留まる事になりそうですかね」

「無理に移動しない方がいいだろう。場合によっては食糧確保のために出て行く必要があるかもな」

 洞窟の奥にできた水溜まりに雫が垂れるのだろうか、不連続な音が妙に心をザワつかせる。