いよいよ帰る日が近づいてきた。
 今晩は、林田くんが送別会を開いてくれる。

「清美ちゃん、いよいよ今日で教えて貰うの最後なのね?」
「鶴田さん、そんな不安な顔しないでよ。もう教える事なんて残ってないんだし」
「本当に全部習い終わった?」
「本当よ。もう、完璧」

 物覚えの良い鶴田さんは、一週間前位からわたしの出番が無いくらい一人で何でもこなしている。
 パートさんからの信頼も得て、既に何年もここで働いているような風格さえ感じられた。
 だからわたしは、何の心配もなく、明日福岡に帰還する。
 今晩、二人と最後に飲み明かす。
 とは言っても、明日気持ち良く帰れるようにお酒はほどほどにしたい。
 お昼頃、上司に呼ばれて食事に連れて行って貰った。
 このまま鹿児島に残って貰いたいなんて言われたけれど、冗談じゃない!
 これ以上純平さんと離れていたら、エネルギー切れで病んでしまいそう。
 帰れる日を指折り数えて過ごしてきたんだから。

 仕事が終わり、林田くんが予約してくれた居酒屋へ行った。
 多くの人で賑わっていたけど、予約客は個室を利用出来た。

「清美ちゃんと別れるのは淋しいよ」
「それはわたしも一緒よ。鶴田さんとも林田くんとも、ずっと一緒に働きたい」
「でも、椎名さんが待ってるしね」
「うん」
「ま、仕方ない。いつか俺達二人で、福岡に遊びに行くよ」
「あら、林田くん。旅費出してくれるの?」
「いいよ。その代わり、ホテルの部屋は一緒な」
「何それ! お断りします」

 鶴田さん、林田くんが年上だと言うこと忘れてる。
 あ、わたしもか。