カメレオン王子と一人ぼっちの小鳥ちゃん


「ただいま……」


 琴梨が帰ってきた。
 俺のいるリビングに向かってきている。


 俺、どんな顔して
 琴梨に会えばいいかわからない……


 さっきステージでプロポーズした時より、
 今の方が緊張している気が……


 こ……こんな時は……

 カメレオン王子!発動!



 俺はローテーブルの前に、正座をした。


「琴梨、お帰り。」
 

 正座&王子スマイルの俺に、
 琴梨も困惑気味。


 琴梨もテーブルを挟んで、
 正座をし、
 うつむきながら爪をこすり始めた。


「琴梨、
 今日の読み聞かせ会、
 子供達も喜んでいたし、
 すごく良かったじゃん。」


「え?礼音くん?
 見ていたの?」


「後ろの方に座っていたパパ集団がいただろ?
 その中に混ざってたんだけど、
 気づかなかった?」


 俺は、観音様みたいな
 優しい微笑を試みてみたが、
 やっぱり、カメレオン作戦はムリムリ。

 
 王子キャラの俺なんて、
 今更どうやっていいかわからない……
 

 なんか余計に、緊張するし……


 って、
 琴梨も明らかに緊張してるじゃん。

 さっきから、爪をこすってるし。


 俺が昼間にプロポーズして、
 どう接していいかわからないんだろうな……


 俺はいつもの俺様キャラでいくことにした。



「今日、ステージに立っている琴梨を見たら、
 あの時のこと、思い出した。
 俺が、お前の前髪を止めてやった日のこと。

 あの時さ、
 始まる前は『人前で絵本を読むなんてムリ』
 とか言っていたお前が、
 まるで別人か?ってくらい
 堂々と絵本を読んだじゃん。

 それを見て、すげーって思った。
 もっと、琴梨と話してみたいと思った。

 その後、図書館の出口で待ち伏せしたり、
 次の日、部室の前でお前が帰るのを待ってたり。

 あの時、
 すっげードキドキしてたんだからな。俺。

 俺さ、高2からずっと琴梨のことが好きだけど、
 一緒にいる時間が増えれば増えるほど、
 お前のこと、もっと大好きになってる。

 だから、もう一度言わせて。

 ずっと、俺だけの女でいて。」



 俺の言葉を、
 まっすぐな瞳を向けながら聞いてくれた琴梨が、
 弱々しい声で言った。


「本当に……私でいいの?」


「当たり前。
 琴梨だけだからな。
 一生、俺の隣にいて欲しいのは。」


「うん……
 ずっと、礼音くんの隣にいる……」


 琴梨ままるで天使のように、
 潤んだ瞳を俺にまっすぐ向けて、微笑んだ。