カメレオン王子と一人ぼっちの小鳥ちゃん


 私たちは券売機から離れ、
 ガラス張りで、
 線路が見下ろせる場所に移動した。


「琴梨に、ずっと渡したいものがあったから。」


「これって……」


 礼音くんが手にしていたものは、
 私の大好きな絵本だった。


「最後に琴梨が学校に来た日、
 この本をビリビリに破られたって聞いたから、
 何軒も本屋をまわって、やっと見つけたんだ。

 それなのに……
 お前さ、あれから学校に来なくなるしさ。」


「ごめん……」


「別に責めてるとかじゃなくて。

 ただ……
 この本、渡したかった。

 今更かもしれないけど、
 琴梨に受け取ってほしい。」


「うん。
 ありがとう。」


「それとさ……
 その絵本の、最後のページを見てくれない?」


「え?」


 私はゆっくりと、
 言われたページを開いた。


 そのページを見たとたん、
 現実なのかわからなくなって、
 固まってしまった。


 最後のページに書いてあったのは。




『俺だけの 女になって』




「それを書いたのは、高2の俺だけど、
 琴梨への思いは、
 ずっと変わっていないから。」


 嬉しい……
 すごく嬉しい……


 6年間、ずっと思い続けてきた礼音くんが、
 私を選んでくれるなんて……


「こんな私で、本当にいいの?」


「当たり前だろ。
 俺の隣にいて欲しいのは、
 お前しかいないんだから。」


「私も高校の時から、
 ずっと礼音君のことが好きだよ。」


 私の言葉に、
 いきなり無表情で
 固まってしまった礼音くん。


「礼音……くん?」


「琴梨の今の言葉……

 すっげー嬉しい!」


 礼音くんは、
 眩しい笑顔を私に向けると、
 きつく私を、抱きしめてくれた。