☆琴梨side☆
想像もしていなかった。
髪をカットして、
礼音くんとはバイバイだと思っていたのに……
今私の隣には礼音くんがいて、
ハロウィンモードの駅前商店街を、
一緒に歩いている。
カットをしてもらっているときには、
あんなに自分のことを話せたのに、
今は何を話せばいいか言葉が全く出てこない。
何か言わなきゃ……
駅に着いちゃう……
その時、
商店街のハロウィン飾りが目に入った。
「礼音くんって、
あのドラキュラみたいだよね。」
私の言葉に、
礼音くんの表情は固まっている。
私……変なこと言っちゃった?
「は?
ドラキュラのどこが
俺に似てるか言ってみろ琴梨。」
「う~ん。
なんか、俺様キャラなところ?」
「ハテナってなんだよ。
適当なこと言うんじゃねえよ。」
お互い目が合って、
一緒に笑ってしまった。
懐かしいな。
礼音くんとのこの感じ。
「お前はさ、あのドラキュラと俺、
どっちがカッコイイと思うわけ?」
「え?
あのドラキュラはイラストだよ。」
「そんなの関係ない。
どっちなんだよ。」
「え……と」
私が答えようとした時
「れ~お~ん!」
一人の女性が、
礼音くんの腕に飛びついてきた。
ミルクティーみたいな髪色のツインテール。
パッチリお目めは、
つけまつげでより存在感が増していて
チェリーピンクの唇がぷっくちしている
美少女だった。
「サクラ、なんだよ……いきなり。」
礼音くんの腕に、
自分の腕を絡めたままのサクラさん。
明らかに、私……睨まれています……
「だって裕章(ひろあき)さんの所に電話をしたら、
礼音がうちの美容院に
届け物に来るって聞いたから。」
「はい。届け物。
由香さんに渡しておいて。じゃあな。」
「礼音、もう行っちゃうの?ヤダヤダ!」
「サクラはカラーの試験、明日だろ?
遊んでる暇なんてないんじゃないの?」
「む~。礼音の意地悪!
いいもん。
試験が終わったら、また礼音のアパートに
遊びに行かせてもらうもん。」
そう言いながら美少女は、
礼音から離れて美容院に入っていった。
サクラさん……
すごくオシャレで可愛い子だったな……
礼音くんのアパートに
行ったりしてるんだ……
それよりもショックだったのは……
私だけが特別じゃなくなっている、
現実を知ってしまったこと……
高校の時は、
俺様キャラの本当の自分をさらけ出せるのは、
女の子で私の前だけって言っていたけど。
もう、違うんだね……
そりゃそうだよね……
6年も……たっているんだもんね……
高校の時は、人に合わせて性格を変える、
カメレオン王子だった礼音くん。
優しい王子様のお面をかぶっていたけど、
本当は、毒舌俺様系だった。
王子キャラで生きるのが辛そうだったから、
礼音くんが、素の自分を出せるようになって
本当に良かったと思う。
それなのに……
胸がきつく締め付けられるように痛くて、
私の瞳からは、
涙がポロポロ流れ落ちていく。
なんで、私は泣いているの?
自分でもわからない。
そして、
この涙をとめる方法もわからない。
「どうした?琴梨?」
礼音くんが、
真剣な眼差しで私の顔を覗き込んだ。
「今日はカット、ありがとう。」
なんとかお礼だけ言って、
私は、また、
礼音くんの前から走って逃げ去った。



