琴梨との電話が切れた後も、
俺は受話器を握りしめたまま
立ち尽くしていた。
「礼音、
お店の電話で、ラブコールはやめろよな。」
「裕章(ひろあき)さん、
別に……
ラブコールとかじゃ……ないですから……」
「もしかして今の電話、
例の彼女?」
「は……はい。
今から、カットに来るって。」
「その子と最後に会ったのって、
高校の時なんだろ?
何年ぶりの再会なんだ?」
「え?
6年ぶり……くらい……」
「礼音ってさ、一途だよね。」
「なんですか、それ!
裕章さん、俺のことバカにしてます?」
「いいや、その逆。
俺、礼音のそういうところに惚れて、
お前をこの店に雇ったからさ。
礼音ってさ、一つのことに、
とことんのめりこんで努力するじゃん。
この仕事に対するお前のその姿勢、
俺は好きだな。」
「裕章さん……」
「何時に来るの?その子?」
「あと30分くらいって言ってましたけど……」
「じゃ、その子の顔見たら、
休憩に入らせてもらうわ。
久しぶりの再会に、
俺みたいなイケメンが礼音の隣にいたら、
その子が俺のところに、
来ちゃうかもしれないな~」
「裕章さん……
今の言葉、奥さんに言いつけますよ。」
「礼音をいじっただけだろ!
ま、午後は予約も入ってないし、
俺は隠れていてやるから。
何かあったら、呼べよ。」
「はい。
ありがとうございます。」
裕章さんは、俺にニヤリとして、
奥の部屋に消えていった。
もうすぐここに……
琴梨が来る……
6年間、
ずっと会いたくて会いたくて
しかたがなかった琴梨が。
やべ!
俺の心臓がドクドクしてるし……
琴梨の髪……
うまく切れるかな……



