カメレオン王子と一人ぼっちの小鳥ちゃん



 どんどん路地の奥へと、
 引っ張られていく。


 その時。


「手、放してもらえますか?
 こいつ、俺の女なんで。」


 礼音くんがその男に、
 睨みながら言った。


「おまわりさん、こっちです。」


 開都くんの言葉を聞いて、
 その男は慌てて逃げていった。



 もう安心。

 二人が来てくれたから。

 あの男は逃げていったから。



 わかっているのに、
 私の呼吸は早く乱れたままで、
 うまく息が吸えない。


 私はその場にしゃがみこみ、
 ぬぐい去れない恐怖に襲われ続けていた。


「琴梨ちゃん、大丈夫?

 怖い思いさせちゃって、本当にごめん。
 俺、すぐそばにいたのに……」


 私の隣にしゃがみ込み、
 目を潤ませながら
 必死に謝る開都くん。


「ごめんなさい……
 ごめんなさい……
 ごめんなさい……」


 私の口からは、
 『ごめんなさい』の6文字だけが、
 ひたすら出続けている。


「琴梨……
 もう大丈夫だからさ……
 あいつ、逃げたからさ……」


 礼音くんが私の背中をさすりながら
 心配してくれている。


 それなのに、私の耳元で、
 黒い悪魔がささやき続けている。



 『子供の時のお前の罪は、
  一生消えないからな』



 そうだった……


 私は、幸せになっちゃいけない子だった……


 人を好きになっちゃいけない子だった……



 私がそのことに気づき、
 目から光が消えた時、
 耳もとにいた悪魔が
 やっと消えてくれた。


 呼吸も落ち着いてきて、
 頬の涙が乾いた。


 礼音くんと開都くんは、
 心配そうに私を見つめ続けている。


 そんな二人向かって、私は口を開いた。