琴梨との出会いを
俺に言い終わってスッキリしたのか、
開都は無邪気に、
俺の作ったクッキーを食べている。
「琴梨先輩に食べてもらいたくて
作ったんですか?このクッキー。」
開都の鋭い指摘に、
俺は飲んでいたお茶を
吹き出しそうになった。
「そんなんじゃないし。
たまたま作っただけだし。」
「へ~。じゃ、礼音先輩が作ったクッキー、
俺が全部食べちゃおっかな。」
「は?
もう開都にはクッキーやらない。
一口もやらないからな。」
俺の言葉なんて無視して、
開都はクッキーをほおばり続けている。
確かにこのクッキーは、
琴梨のために作った。
お菓子なんか作ったことがなかったけど、
家にあった母さんの
お菓子作りの本を見ながら、昨日作ってみた。
粉や砂糖の量を、
きっちり計らなきゃいけないし。
型をとったら、残った生地をまとめて、
伸ばして、また型を取ってと、
めんどくさい作業だったけど。
琴梨が
おいしいって笑ってくれるかなって思ったら、
なんか幸せな気分になれた。
琴梨のカットが終わったら、
クッキーを渡すつもりだけど……
なんて言って、渡せばいいんだろう?
なんか緊張してきた……
俺、渡せるかな……
「礼音、お待たせ。
琴梨ちゃんのカットが終わったよ。」
陽介さんの声を聞いて、
俺と開都は目を合わせてニヤリとして、
階段を降りた。
琴梨、
どんな感じに変身しているんだろう……
陽介さんは、
俺の好みを100%把握しているし、
きっと清楚系なんだろうな……
前髪は目の上くらいで、
ストレートの髪は、
鎖骨くらいだろうな……きっと……
そう思いながら美容院に入るドアを開けると、
琴梨が恥ずかしそうに、立っていた。
「え?」
俺の思っていたのと……
全然違う……
俺の隣にいる開都も、
目を見開いたまま固まっている。
え?
本当に?
琴梨だよな??



