カメレオン王子と一人ぼっちの小鳥ちゃん


 ☆礼音side☆


 俺は開都と二人で、
 美容院の2階にある休憩室に来た。


「適当に座って。」


 俺の言葉に、開都は6人掛けのテーブルの、
 一番隅に座った。


「開都さ、何飲む?
 コーヒー?紅茶?

 あ、オレンジジュースがいいか。
 お前、お子ちゃまっぽいもんな。」


「は?
 礼音先輩とは1歳しか違わないのに、
 子供扱いはやめてください。
 じゃあ、お茶で。」


「お茶なんて言ってねえし。
 ま、あるからいいけどさ。」


 俺は沸かしたお湯を注いで、
 開都の前にお茶を出し、
 斜め前の席に座った。


「お前さ、なんで琴梨の
 ストーカーなんかしていたんだよ。」


「ストーカーなんてしてないし。」


「この美容院の中、覗いていたじゃん。

 お前まさか、
 学校から俺たちの後をついてきたとか?」


 しばらくの沈黙の後、
 開都は小さな声で答えた。


「学校からじゃないし……」


「へ?」


「公園からだし……」


「なんで、俺と琴梨が
 公園で待ち合わせていたのを知っていたんだ?」


「それは……

 昨日資料棚の所で話す会話が、
 きこえちゃったから……」


 ちょっと問い詰めすぎたかな。


 時折、唇をかみしめながら話す開都が、
 ちょっとかわいそうになってきた。


「からかい過ぎて悪かったな、
 アルパカ君。」


「ア……アルパカ?」


 開都は目を見開いて、
 何言ってんだって顔で俺を見た。



「お前の名前、有宮 開都だろ。
 『ある』と『開』でアルパカ。」


「へ?へ?
 意味が分かんないんですけど。」


「だからさ、『開』って漢字が、
 箱をパカって開けるイメージじゃん。
 おれさ、結構冴えてるでしょ。」


「俺がアルパカなら、
 礼音先輩はカメレオンじゃないですか。

 学校での礼音先輩にそっくり。」


「このやろう!
 人が気にしているところを
 突っ込んでくるんじゃねえよ。」


「お互いさまでしょ。カメレオン先輩。」


「せっかく、昨日俺が作ったクッキーでも
 出してやろうと思ったのに、
 食べさせてやらない。」


「礼音先輩、クッキー焼いたりするんですね。
 1つくらいくださいよ。」


「は?
 1口でも食べたら、
 開都は明日から、俺のかばん持ちだからな。」


 いつの間にか、開都とじゃれ合っているのが、
 楽しくなってきた。


 開都も言いたいことを言う割に、
 無邪気に笑っているし。


 開都の奴、結構良い奴なのかもな。


「開都さ、琴梨のこと好きだろ。」


 おれのストレートな質問に、
 急にアタフタしだした開都。


 顔を赤らめているところをみると、
 クラスの女子たちが
 開都をカワイイって言っているのが、
 よくわかる。


「礼音先輩だって……」


「お前は昨日聞いたんだろ。
 俺が琴梨に告ったの。」


「はい……聞きました……
 正直、かなり焦ってます。」


「で、お前は琴梨を好きになる
 きっかけとかあったわけ?」


「ありましたけど……」


 開都は俺の焼いたクッキーを1枚食べると、
 琴梨との出会いを、話し始めた。