「開都くん?どうしたの?」
「え……と。
どこか……良い美容院がないか……
探していたところで……」
「嘘つくなよな。」
礼音くんのするどいつっこみ。
「礼音先輩、
俺、嘘なんてついてないですよ。」
「はいはい、二人ともそこまで。
琴梨ちゃんの髪の毛をカットできないでしょ。
二人は2階の休憩室で、
お茶でも飲んで待っていてよ。」
「陽介さん、
俺、こいつと二人でお茶なんて
飲みたくないし。」
「俺だって、
礼音先輩なんかと一緒にいたくないです。」
「お前、開都って言ったな。
お前がストーカーしていたこと、
学校中に言いふらしてやるからな。」
「それなら俺だって、
礼音先輩は誰にでも優しい王子様じゃなくて、
悪魔みたいな毒舌俺様キャラだって、
みんなにバラしますから。」
「開都……てめー。」
「はい、そこまで。
続きは2階でやってくれる?
早くカットを始めないと、
琴梨ちゃんが帰るのが、
どんどん遅くなっちゃうだろ。」
「わかったよ。
開都、2階行くぞ。」
「え?
俺、帰るからいいです。」
その時、礼音くんは開都くんの耳元で、
何かをささやいた。
「やっぱり、帰るのやめます……」
そして礼音くんと開都くんは、
2階に上がって行った。
「ごめんね。琴梨ちゃん。
やっと髪の毛をカットできるね。」
「いえ……お願いします。」
『お金は取らない代わりに、
俺の好きなように切らせてもらうね』と
陽介さんが微笑んだから、
私はコクリとうなずいた。
私はどんな自分に、
なってしまうのだろう……
「それにしても驚いたよ。
礼音が本性出せる相手は、
家族以外は親友の1人だけって
聞いていたからさ。
琴梨ちゃんにも、開都くんって子にも、
素の自分をさらけ出していて。」
「学校での礼音くんは、
誰にでもニコニコ優しい感じです。」
「だよね。」
「礼音くんの周りには、
いつも友達がたくさん集まって、
羨ましいなってずっと思っていました。
私とは……正反対で……」
「琴梨ちゃんは、
礼音の本性を知ってどう思ったの?」
「はじめはビックリしました。
学校での礼音くんと全く違うから。」
「怖くない?
あいつ、言い方きついでしょ?」
「怖くはないです。
逆に……嬉しいって思ったりします……
私……ちょっと変ですかね?」
「ありがとう、琴梨ちゃん。」
「え?」
「本当の礼音のこと、受け入れてくれて。
叔父として、すっごく安心した。
琴梨ちゃんみたいな子が、
礼音のそばにいてくれてさ。」
「そばにいるなんて……
そんな……そんな……
私なんかじゃ、
礼音くんに釣り合いませんから……」
「そんなことないよ。
琴梨ちゃんは、
すっごくかわいいんだから。
俺が今から、
髪をカットして証明してあげる。
バッサリいっちゃうから、覚悟してね。」
陽介さんは鏡越しに私に微笑みかけると、
私のメガネをぞっと外してくれた。
ド近眼の私には、
カットされて自分が
どんなふうに変わっているのかわからない。
わかるのは、
何かにとりつかれていたような私の心が、
少しだけ軽くなったような感覚だけだった。



