最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~

 
 
舞踏会は、息を呑む客たちの注目を浴びて始まった。

精神を病み床に伏せっていると噂のナタリア王女がすこやかな姿で出席したことにも皆驚いたが、何よりも人々に衝撃を与えたのは目を見張るような美貌だ。

容姿もさることながら、高貴な者だけが持つ崇高な気品が全身から溢れている。こんなにエレガントな王女がこの大陸にいたのかと、客人たちの誰もが衝撃を受けた。

主催者であるにも関わらず、イヴァンはナタリアをエスコートして会場入りした。そのことにも招かれた客たちは驚いた。

それは今日の主役がナタリアであることを示しており、つまりは実質イヴァンの結婚相手の顔見せであることを客たちは悟る。

イヴァンの計画は上々だった。

これだけの衝撃を与えたのだ、ナタリアの美しさと彼女が次期スニーク帝国皇后であることはきっと瞬く前に大陸中の噂になるだろう。

あとは――無事に舞踏会を終えるだけだった。

イヴァンは緊張して少し硬くなっているナタリアを常に自分の手が届く場所に置いた。主催者としてのあいさつのときも、傍らに彼女をいさせた。

会場にはナタリアの側近や侍医も待機しているが、もし彼女が錯乱したときに一番適切に対応できるのは自分だとイヴァンが思っているからだ。

しかしその心配は杞憂のまま、ナタリアは王女としての品格を失わず時間は流れた。