近くに王家の離宮があるこの森林公園は国が所持・管理しているものだ。
ローベルトの事件があってからしばらく封鎖されてたが、イヴァンが実権を握ってからは「封鎖している方が墓標みたいで薄気味悪い」と開放され、綺麗に整備もされている。
手前には散歩道がありベンチなども置かれているが、柵で区切られた奥は木々が鬱蒼としている天然の森だ。野生の動物も多く、王侯貴族の狩猟場になっている。もっとも、イヴァンはこの公園で狩猟などする気になれず、十年間足を踏み入れたことはなかったが。
森はそのまま真後ろのブールカン山脈へと続いており、果てがない。
はっきり言って、ローベルトがこの広すぎる公園のどこで白い雪割花を見つけたのか、まったく見当がつかなかった。
(兄上は白い雪割草のことを知っていて、宛てがあってこの公園に取りに来たのだろうか……? そういえば兄上は幼い頃からよく図鑑を眺めていたな。植物のことも、なんにでも詳しかった。王家に生まれなければ学者になったかもしれないなどと、家庭教師が言ってたこともあったっけ)
フエルトのブーツで雪を踏みしめ公園の奥に進みながら、イヴァンは懐かしいことを思い出す。
ローベルトは温和で賢く優しい兄だった。王家の長男である自覚を持ち、いつも理性的に振舞っていた。彼がわがままを言ったり駄々を捏ねて大人を困らせている姿を、イヴァンは一度も見たことがない。



