最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~

 
 
帝都から西へ向かうことおよそ二百キロメートル。本来なら冬場は三日と半日はかかる距離を、イヴァンは不眠不休で馬を走らせわずか二日でブールカン山脈のふもとへ到着した。

途中で馬は変えたものの、ほぼ休むことなく馬を走らせたせいで隊員の兵士たちはだいぶ疲労困憊している。

けれどイヴァンだけはまるで疲れなどみせず、早朝に目的地に着くと迅速に隊に探索範囲を指示して自らも雪割花を探し始めた。

通常の雪割花は青紫色をしているものだ。白いものなどイヴァンとて十年前にローベルトが取ってきたものしか見たことがないし、ルカはじめ隊員たちに至ってはそんなものが存在することすら知らなかった。

捜索隊は馬を降り森に入って雪に埋もれた地面をしらみつぶしに探した。本当に白い雪割草など存在するのか疑問に思う者も大勢いた。

ましてや季節は二月下旬。雪を割って春を報せる花が芽吹くにはいささか早い。

皇帝の命令なので従うしかないが、見つかるわけがないとほとんどの者が考えていた。

(……あのとき、ローベルトは森林公園で発見されたと聞いたが……)

十年前に兄が足を踏み入れたのと同じ、雪に埋もれた森林公園の入口に立ちイヴァンは辺りを見渡す。