イヴァンの危惧した通り、ナタリアの精神は異常をきたすようになった。
心を乱す回数は日を追うごとに増え、もはやまともな状態のときの方が少なくなってきている。
そしてわずかな正常のときでさえ、彼女は部屋に閉じこもって人と会わないようになってしまった。もう誰にも奇行を見せたくないと泣いて。
イヴァンはもはや決断するしかなかった。ナタリアを自分から――スニーク帝国の地から離し、遠いイルジアで転地療養をさせることを。
回復するまで何年かかるか分からない。それはスニーク帝国にとって皇后不在ということでもあり、皇帝はほとんど妻と会えないことを意味していた。
けれどこのままではナタリアの病状は悪化する一方のうえ、彼女が苦悩のあまり自ら命を絶ってしまいかねない。選択の余地はなかった。
「――ナタリアをイルジアに送る。彼女が不自由なく暮らせるように準備を整えろ」
イヴァンがそう決定し侍従らに命じたのは、結婚式から一年が過ぎた二月のことだった。



