最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~

 
嗚咽に呑み込まれそうになりながら声を絞り出すナタリアを、イヴァンは強く、強く抱きしめた。たくましい腕で、ナタリアの細い体が折れそうなほどに。

苦悩に顔を歪めたイヴァンは何度も口を開きかけては噤むのを繰り返す。

「この命に誓って、俺はお前を裏切ってなどいない――」

呻くように伝えるが、その真実がナタリアの心にはもう届かないような気がした。

どれほど誠実に愛そうとも、あの病がある限りナタリアは怯え続けるだろう。自分は愛される資格がないという自信の喪失は、彼女を疑心暗鬼に追い込む。

愚かな噂に耳を貸し、誠実で献身的な夫を疑ったとしても、誰がナタリアを責められようか。

もう限界なのだ。無垢のふりをして不安から目を逸らすことも、奇異の目にさらされても毅然と装うことも、愛する夫を苦しめ続けることも。何もかもがとっくに限界を迎えている。

そして――きっとこれからますます壊れていくだろう最愛の妻を見続けなければならないイヴァンの心も、限界を迎えていた。

「愛している、ナタリア……。愛している……」

そう繰り返すことしか、イヴァンにはできない。どんなに誠意を尽くした言葉も、ふたりを救ってくれないことは分かっているから。

自分の命より大切な存在を胸に抱きしめながら、イヴァンは彼女の心が壊れる音が聞こえる気がして、頭が痛くなるほど奥歯を噛みしめた。