最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~

 
「間違っても木彫りの熊なんて贈らないでちょうだいね」

愛らしい目を三日月形に微笑ませ、ナタリアは得意そうに笑う。

さすがにこれにはローベルトも悩んでしまい、「綺麗でこの世にひとつで心の籠もっているものか……」と腕を組んで考え込んでしまった。

そんな彼の姿を見てクスクスとおかしそうに肩を揺らしたナタリアは、満足したように立ち上がって「嘘よ。もういいわ」と告げようとした。ところが。

「あ、――そうだ」

何かを思いついたようにローベルトは顔を上げる。

そして北に広がる森林公園をチラリと見やってから、自分も立ち上がってナタリアの頭を帽子越しに撫でた。

「わかったよ、ナタリア。とっておきの贈り物をしてあげる。約束するよ、だから少しだけ待ってて」

「え……本当?」

まさか無茶を承知で言ったわがまままで受け入れてもらって、ナタリアは驚いて青い目を何度もまばたかせる。

ローベルトは柔らかに微笑んで頷くと、振り返ってイヴァンに告げた。

「イヴァン。悪いがナタリアを連れて先に離宮へ戻っててくれ」

イヴァンは頷きながらも、やはり驚きの表情を隠せない。