最愛なる妻へ~皇帝陛下は新妻への愛欲を抑えきれない~

 
親衛隊長が沈痛な面持ちで一礼して部屋を出るのと入れ替わりに、侍従長のオルロフがやって来た。

「陛下、申し上げます。ハルデンベルク大公殿下および外交団は予定通り正餐室へとご案内いたしました。昼食会の準備は整っております」

その報告を聞いて、イヴァンはナタリアの頬から手を離すとゆっくりと立ち上がった。

「ご苦労。俺も正餐室へ向かおう。ナタリアは目が覚めたら自室へ連れていってやってくれ」

女官らにそう命じて、イヴァンはオルロフと共に部屋を出た。

「昼食会の席はどうなっている」

「はい、すでに変更の手配済みです。皇后陛下のお席には皇太后殿下がお着きになってくださいます」

「そうか。客人らにはなんと言ってある」

「……皇后陛下は重度の貧血を患っており、昼食会は欠席すると」

オルロフの答えを聞いて、イヴァンはフッと自嘲気味に口角を上げる。

「貧血か。スニーク帝国の貧血は奇病だと、今頃さぞかし正餐室は盛り上がっているだろうな」