毘沙門天様はカリカリしている。そう言い捨てて、ズカズカと歩いて馬車の方へと先に戻っていった。
「あら、私達も行きますか。…では、天王様、会場で。カッコよく着飾って来て下さいね?」
「おー。吉祥天もキャンプするべ?」
「うふふ。きゃんぷ?野営ですか?大丈夫かしら」
吉祥天様も朗らかに笑いながら自分の夫の後を追う。
「羅沙、行くぞ」
「お、お兄様っ!」
「何だ?」
「ち、ちょっと、豹牙とお話ししても良いですか?」
じっとお兄様に無言で見られる。
久々に豹牙とお話ししたい。でもダメかな…と、思ったが、お兄様はすぐ「わかった」と言って、馬車へと戻っていった。
「あ、ありがとうございます!後で行きます!」
そうして、私を残して馬車は発進する。すぐ目の前の善見城へと向かっていった。
その場から見送っていると、豹牙が横にやってきて「相変わらず派手に引き連れてやってきたわねー?」と馬車、人、馬の行列を見渡している。
「羅沙は毘沙門天たちと来たのか」
「う、うん」
「珍しいなー?羅沙が善見城の行事にやってくるなんてよ」



