毘沙門天様に咎められて、豹牙は仕方なく重そうに腰を上げる。

そして、燃え盛る炎に手を掲げると、炎は一瞬にして消えた。

神力だ。神術で炎を簡単に消してしまった。

炎が消えたその跡をさっきの白いもふもふした生き物、ぽめが覗き込んで「わんわんっ!」と吠えている。

あ、危ないよ。消火直後だから。顔を突っ込んじゃダメ!



おろおろしながら、その小さなもふもふのぽめの様子を見守っていると、後ろから豹牙の声がする。



「心配すんな。ぽめはわかってるから大丈夫」



振り返ると、そこには不敵な笑みを浮かべてこっちを見ている豹牙がいた。



「ぽめはお利口なのわかってるだろ。…それにしても久しぶりだな?羅沙」

「う、うん!」



本当だ。本当に久しぶりだ。



…あ、そういえば。

豹牙には話してなかった。実は婚約していて竜王領にいたこと。

その間、うちに遊びに来ていたかもしれない。知ってるんだろうか。



「取り敢えず、人間界の物は速やかにお片付け下さい!…あと、もう少しで式典が始まりますよ!準備なさって下さい、天子様!」

「わーってるよ。あと俺もう『天王』ですからねーん。毘沙門天、今度一緒にキャンプ行こ。人間界グッズ使って」

「…暇はありませんよ!」