でも…他に将来を誓い合った人がいるのに、無理矢理竜王様の側妃にさせられようとしてたの?
権力争い、なんて卑劣な。
それは…黎奈様も苦しかったよね。
「…だから、黎奈のところに通っていたのは、情報交換がてら、黎奈を後宮から逃す算段を秘密裏に企てていたんだ。黎奈の家が傷付かないよう、また、黎奈の婚約者とも連絡を取り合って、魔族討伐遠征がてら、阿修羅王領と行ったり来たりしていて…で、あの神術騎士団出立する時に、どさくさ紛れに黎奈も一緒に連れてって、こっそり家に返して来たんだよ。大成功」
「…だから、あの時黎奈様も一緒に?」
私はてっきり、竜王様が黎奈様を側に置いていきたくて連れて行ったのかと…。
そんなことになっていたなんて…そりゃ忙しいはず。
「黎奈には、羅沙のことをしっかり見張っていてもらうよう頼んでいたんだ」
「…見張るって何ですか!」
「ごめんごめん。それだけ気にかけていたってことにしておいてよ。そうでないと、騎士団に混じって剣の稽古しちゃったりするだろ?それに…朱嘉が羅沙に当たり強いって聞いちゃったから」
「………」



