「羅沙」

「は、はいっ」

「取り敢えず、側妃は俺の意向じゃない」

「へ?」

「俺には側妃は要らない。…正妃一人いれば十分なんだ。羅沙さえ居てくれれば…」

「ち、ちょっと待って下さい!」

「…ん?」



ちょっと頭が混乱。急に側妃は要らないと言われても。



「だ、だって私達は政略結婚で、正妃はお飾りで…お兄様に押し付けられただけなんじゃ?竜王様は責任感じて…」

「…誰がそんなこと言ったの?」

「はひっ!」

竜王様の表情が笑顔のまま、険しくなって恐ろしさを感じたため、また変な声が出た。

あまりの恐ろしさに『白龍様と朱嘉様です!』なんて正直に言えない。



「…なーんてね。誰がそんなガセを吹き込んだかは想像つくけど」

「へっ」

「朱嘉が羅沙に罵声を浴びせていたことは、黎奈から聞いてるよ。白龍は…ごめん。俺が事情を説明しなかったから。悪気はなかったんだよ」

黎奈様が?意外な人物の名前が出て来たことに、呆気に取られてしまう。

事情とは、なんだろう。



だが、そんなことを考えてる間もなく、竜王様は驚愕の発言をする。



「側妃は要らない。後宮は無くすから」