「い、いえ…それは私もかなり浅はかでした。主の帰りも待てずに勢いで…反省しております」

それは、私も猛省している。王族の心得、事情も無視して、あれも嫌だこれも嫌だと我慢出来なかったのだから。

だけど、竜王様は首を横に振る。

「いや、羅沙は謝らないで。俺だって何の説明もせずに誤解を与えたままで…」

「誤解?…ですか?」

「…後宮、側妃のこと」



…来た。とうとう、きた。この話。

心が折れてしまったきっかけとなった、側妃のお話。思い出すと泣きたくなってくる。

でも、もう泣かないぞ。と、ぐっと唇を噛み締めた。

の、だけれども。



「あれそのものが誤解で…」

「へ?」

「あれは老中院の年寄りたちが勝手に連れてきたんだ。俺の許可無しに」

「………」



思考が止まる。

え?側妃って、大御所さんが連れてくるものなの?

側妃って、竜王様の寵愛を受けた方々だから、後宮にいるんじゃ。

白龍様だって、朱嘉様は寵姫だったっていう…。

それが誤解って…。