「もう、離さないよ?羅沙」
「へっ?!そ、それは困り…」
「話を聞いて欲しい」
真剣な眼差しを向けられながら、伝えられるその要望は。
彼が何度も訴えてきたことであり、私が何度も目を背けては逃げてきたことだった。
そして、もう…逃げてはいけない。
とうとう、この時がやってきてしまったのだ。
「は、はい……」
…逃げるな、私。
私の返事に、竜王様の顔が緩む。目が笑った。
その眼福笑顔に、あぁ…と、ついうっとりしてしている場合じゃない。
気を取り直そうと、顔を横にぶんぶん振ったその時。
体がフワッと持ち上がった。
「ひゃあ!」
「…おまえら!着いてくんなよ!」
「えー。陰でエロいことすんなよー?」
「…するか!」
どうやら、竜王様は私を横抱きにしたまま立ち上がったようだ。
そして、そのままそこから離れる。そこにいた豹牙たちが段々小さくなっていった。ぽめがこっちに向かって「わん!」と短く吠えている。
私、このままどこかに連れてかれる?横抱きのまま!
「り、竜王様!私歩けますよ?だから…」
「ダメ。また逃げられたら困るし」
「に、逃げませんよ!」
「ダメ」



