…いちゃもんつけられるのは、想定の範囲内で。

この二人を納得させることができる言い訳と提案は考えてきた。



『…舎脂様は、紅い炎がお好みのようですが、蒼い炎はお好きではありませんか…?』

『ほう…?』



舎脂様は口角を上げて、悪そうに笑う。興味を持ってはくれているのか、それとも俺の言いたいことに気付いたか。



『…もしや、竜族の禁呪【蒼天の炎】とな?』

『よくご存知で?』

『天界一の神術士、まさかそのような禁呪を習得したとでも?』

『…羅沙に神術は習得させない。その代わりに、黒闇天女が現れた暁には、この水帝・大海竜王が貴女を、この天界をお守りし【蒼天の炎】で焼き尽くしてご覧に入れましょう?』



水の加護を司る竜族に代々伝承された、禁呪の数々。

その中でも、唯一の【炎】の術式。

特級・炎禁呪【蒼天の炎】。

炎の四大禁呪のひとつであるこの技は、羅沙の【紅蓮の炎】と同等の威力を放つであろう。

……何を隠そう、羅沙の【紅蓮の炎】の存在を知ってから、古くから伝わる術式書を解読して、ようやく皆伝した。



この特級中の特級禁呪を引っ提げて、羅沙の代わりに、俺が黒闇天女と対峙する。

それで、双方を納得させる…が、俺の作戦。

圧倒的な破壊力を誇る、最高特級禁呪なら文句も出まい。その証拠に、舎脂様は満足そうに笑みを見せる。



『ほう?…幻の禁呪にお目にかかれるか。それは楽しみだのう?』