舎脂様は再び笑う。刃のような視線をこっちに向けて。

『ええ』

堂々と頷いてみせた。

広目天様は、目を丸くして驚いていたが。



『ならば、尚更退けと罵ってやりたいところだがな?…【紅蓮の炎】は黒闇天女を燃やし、死の直前まで至らしめたというではないか?ならば、黒闇天女が再びこの天界に脅威を与えし時、再び【紅蓮の炎】で燃やすという切り札を持っていれば、それは脅威では無くなる。…この価値は、竜王、其方にわかるまい』

『…舎脂様は、尻込みしておられるのですか?黒闇天女の脅威に』

『竜王!先天妃に不敬であるぞ!さっきから黙っていれば!』

広目天のオヤジが慌てて間に入ってきた。笑える。

しかし、笑ったのは舎脂様の方だった。

扇子で口元を隠し、高笑いをする。



『尻込み…そうとも言えよう。それほどまでにあの女は脅威だ。しかし竜王、そこまで言うのならば、それなりの対価はあるのだな?』



来た。来たぞ。その一言を待っていた。

対価、それは…俺が羅沙を娶る代わりに、それ相応の何かをしろと言うこと。