『くっ…!』
耄碌ジジイ、言葉を詰まらせたぞ。
何の縁もゆかりもない夜叉族に政略の縁談なんて不自然だからな。それに、まさか齢25の万里様が羅沙に惚れ込んだどころか、あの夜会にもいなかったのに面識があるわけがない。もしあるならそれはそれで腹立たしいけど。じゃがいもの品種改良どころか、じゃがいもに興味すらないだろうな。
黒闇天女のことはあくまでも口に出来ないという話か?ならいっそ畳み掛け…。
『クッ…ククッ…全ては存じた上でか?竜王』
『…先天妃!』
俺達の攻防を傍観していた舎脂様が、横で笑いを漏らしている。
この耄碌ジジイよか、正直この人の方が怖い。
自分に仇なす者に正面から立ち向かい、声をあげて人を動かし。
絶大なるトップを滑落させた、計り知れないバイタリティを持つ御方。
その眼力は、まさしく蛙を睨み付ける蛇だ。
『竜王…其方、あの夜叉の姫が持つ価値を分からぬ上での発言であるまいな?』
『…価値?』
羅沙が持つ価値、とは。
恐らく、俺とこの人らとでは、その意味合いが違う。
『価値は、見出しております』
…遠慮なく爆弾を落としてやる。
建前ではなく、敢えての本音の爆弾。



