一族間の繋がり、同盟を結ぶ為に、族長同士で交わせる契約の中に『婚姻』の事項も含まれている。
謂わゆる、政略結婚だ。
この場合、それぞれの王である俺と夜叉王がOK出せば、それだけで簡単に強制力の強い契約が成立してしまう。
…広目天様も、夜叉王にYESと言わせるこの手を考えているのだろう。
頭に何度も過った手だが…それでは羅沙の気持ちを無視したことになる。
でも、何だかんだ言ってる暇はない。
兵器として嫁がせるよりは、数段マシだ。
『…羅沙に神力を使わせない。戦の場に立たせない。白楼様の遺言でもあるだろ?それをみすみす無視する話に乗っかるのは、夜叉王としても不本意じゃないのか?』
『…確かにな』
『この契約なら舎脂様も広目天様も手出しは出来ない。だから、気付かれる前にさっさと契約して、直ちに羅沙を竜宮に呼ぶ。あーだこーだ文句言われる前に、全てを終わらせる』
『だが、羅沙は何の教育もしていないぞ。王妃教育。おまえんとこの老中院はなんて言うか』
『文句は言わせない。そんなものうちに任せればいい。一年あれば教育し終わるだろ。その間、婚約期間として一年後には結婚だ』



