『じゃあ、広目天様もそういう名目か?』
『広目天様にとって黒闇天女は父の仇。…羅沙を手元に置いておけば、黒闇天女と接触出来て、羅沙を使って仇打ちが出来るとでもお考えなのだろう』
その話を耳にして苛立ちを覚える。
どいつもこいつも、羅沙を兵器扱いしやがって。自分のことばかり。
神力習得させて、あの炎を使わせる気か?
羅沙の幸せなんて、ひとつも考えてないじゃないか…!
羅沙を幸せにするのは、俺だ。
黒闇天女から守るのも、戦の場から守るのも、平穏を与えるのも…俺だ。
その為に、即位して足りないものを補って精進してきたんだ。
今更みすみすと、他の奴らに渡すことなんて、出来るか…!
だがしかし、権力てっぺん連中の強い要望を回避するのは、俺にしても夜叉王にしても簡単ではない。
今の俺達に、恋仲になる云々やってる時間はないのだ。
そして、とある案が俺の頭に浮かんだのである。
『…夜叉王、今すぐ俺と夜叉王の間で婚約を取り付けてくれ』
『え?俺と竜王が婚約?』
『は?…バカか!俺と羅沙のだよ!何が悲しくて男同士で婚約だ?この!…俺達、族長同士の間で契約を交わせる結婚、あるだろが!』



