すると、足音がして背後に気配を感じた。

ハッとして振り返ると、そこには怪訝そうな表情を見せる白龍様が立っていたのだった。

…ええぇぇ!何でこんなところに?!



『こんなところで何してるんです?羅沙様』

『あ、そのっ…』

『いくら後宮内とはいえ、正妃ともなられる御方が夜更けに一人で出歩くのは目に余るものがございますが』

『す、すみませんっ…』

『…で、ご覧になっていたのですか』

『はっ…』

唐突な話の切り替えに一瞬たじろんでしまった。

見ていた、とは…何を?

って、言うまでもない。



白龍様に見られていた。

私が、あの二人を目撃し、様子を覗いていたことを。

茫然と立ち尽くす、その姿も。



『…ひょっとして驚かれているのですか?』

『へっ…』

『まさか、側妃の存在に疑問を持ち、不服を抱えているとか』

『………』

すべて見透かされている。

更なる動揺を隠しきれていない、俯いてしまった私に、白龍様は深くため息をついていた。



『…わかっていらっしゃると思いますが、あの御方は、我々一族の王です。何もあなただけのものではない。…我々一族、皆のものです』

『………』