鬼子母神に逆に断られ、それ以来、鬼子母神が夜叉王を訪ねてくることはなかった。
そして、夜叉王という後ろ盾を無くした鬼子母神は、三宝の力をとうとう没収されてしまうのだった。
鬼子母神と生まれた赤子の所在も掴めず。
赤子を引き取ることができなかった、と白楼は軽く落胆するが。
ーーそれから、三年の時が過ぎたある日。
思わぬ事件と、思わぬカタチでその赤子…羅沙を引き取るカタチとなるのだった。
それは、天界には珍しく、雷雨の降り頻る夜だったという。
夜叉王の居城、金剛鬼宮にとある来客が訪れた。
ずぶ濡れになったローブを身に纏った女性。年頃は三十路のようだ。
その腕には…一人の女児が布に包まれ抱えられていた。
そして、女性は名を名乗る。
『…私は、皇諦(こうたい)と申します。…鬼子母神の長女です』
『き、鬼子母神の?』
『お願いです、夜叉王様!この子を…私達を、母を助けて下さい!』
そんな長女が抱えて連れて来た子は、少々痩せこけているが、漆黒の髪と瞳。
ひょっとして、ひょっとすると。
『…この娘は、三年前に夜叉王様と母の間に生まれた子です…』



