だから、こっそり抜け出して、こっそり竜王様に会いに行こうと思ったのだ。
怒られる覚悟で。
…だが、この出来事が。
私のこの世界でのどん底生活の始まりだったりする。
抜け出したすぐその先で見てしまった。
竜王様が後宮内にいて、朱嘉様の居室の前にいるのを。
そして、見てしまった。
そこで竜王様と朱嘉様が、強く抱擁し合っていて、互いに唇を激しく絡み合わせている。
キス…している。
(ええぇぇっ…!)
思わず身を隠して、そっと陰から覗いてしまう。
その情熱的な激しい接吻と抱擁に、目の前が真っ暗になり、クラクラとしながらも。
『あぁ…竜王様、こんなところでは…』
『…いいから、早く中に入れて』
『ええ、いつものように熱く抱いて下さいませ?』
そんな会話を交わし、二人は朱嘉様の部屋へと消えていった。
残された私は一人、茫然と立ち尽くす。
(そんな…)
子孫繁栄のため、一族のため。
側妃が必要なことぐらい、わかってる。
でも、本気で想い焦がれていただけに、それを目の当たりにすると、動揺を隠しきれない。



