私達は今、街から離れて郊外の方へと向かっている。
郊外とは言っても…林道ですけど。
本日のキャンプ地探し。
豹牙に『今日は人の来ない泉のほとりにテントを立てたい』と言われ、思い当たるところがあったので案内しているのだ。
林道となった道を歩くこと数十分。
日差しが陰った生い茂る樹々の道を抜け、視界が開けたそこが、目的地だ。
日差しに反射してキラキラと光る水面。
それだけではなく、透明度の高い水面には、向こうの水際に聳える『魔の森』の樹々が鏡のように映る。
「おおっ!泉じゃなくて、湖か!」
「うん。ここしか思いつかなかった…」
この葉玖の町と『魔の森』を隔てる湖だった。大昔の火山噴火の際に出来たくぼみに淡水が溜まって湖となったらしい。
良い観光地で人も来るのだけど、私が案内したこの場所は、なんせ目の前があの『魔の森』なので、みんな近寄って来ない。
「水がきれいだぞ!…それ行け!」
「わんわんっ!」
豹牙はそう言って一目散に砂浜の湖畔へと走っていく。
ぽめもつられて豹牙の後を走って追いかけた。



