ぽめがわんわんと吠え続ける中、豹牙は印を結んで炎上テントの方へと掲げる。



「…静寂の狂風、理の雷…」



そよそよと微かに吹いていた風がピタリと止む。

まるで、夕凪のように。



すると、術式の陣が出現。炎上テントを中心とし囲むように、パチパチと電光を放ちながら真下に描かれていた。



「…天獅子相殺、『疾風迅雷』!」



豹牙の声に反応して、外周の円から無数の雷が立ち上る。

同時に一瞬で炎の存在が無くなった。何も無かったかのように…!



「おー。ぽめの言う通りだ。ホントに効いた」

「わんわんっ!」

「わははは。お利口だなおまえー」



褒められて嬉しかったのか、ぽめは一目散に走り出して豹牙に飛びつく。

なでなでされて、嬉しそう。



…と、ここでめでたしというわけにはいかない。



術陣も消えて、そこに残されたのは…鎮火したテントだった。

あの化学繊維も焼け焦げてボロボロ、骨組みだけが傾きながらも残っていて、見るも無惨に全焼…。

あわわわ…。



成れの果ての姿となったテントを見て、二人茫然と立ち尽くしていた。