この歓迎されていない王宮の雰囲気も。

【不貞の子】と嘲笑われ後ろ指差されて、傷付く日々も。

自国や家族をバカにされては、憤りを感じる日々も。

想い慕う人が、堂々と他の女性に愛を注ぐ姿を目の当たりにするという、毎日失恋のような日々も。



何なんだろう、このおかしな世界は。



…そして、そんな痛くて苦しい世界で生きている私は、何なんだろう。

居場所もないこの世界に、わざわざその身を置く理由は…何なんだろう。



それは、ただ。

兄の面子を潰したくないから?

竜王様を想い慕っているから?…私にはその想いを向けてくれないのに?



そもそも、何で私ここにいるの?



考え出すと、疑問が止まらなかった。

そして、我に返る。



…ここは、私のいる世界じゃない。



もう、ここから出よう。

もう…逃げよう。




そう考えがまとまってしまうと、そこからは早かった。

竜王様に婚約解消を申し出て、この水晶竜宮を出る。

『ここを出ます』とまでは伝えられなかったけど。