本当によく笑うね、豹牙は。
それは、呆れるほど。
こっちも苦笑いが出てしまう。
「羅沙!一緒に来い!…見たことないもん見しちゃる!」
そう言って、私に手を差し出している。
「え…?」
見たことないものを、見せてくれる…?
《に、人間ってどんな見た目なの?》
《ねえねえ、人間は何で移動してるの?だって神力使えないんでしょ?馬?》
胸がドクンと揺れて、熱く震える。
…ねえねえ。私の見たことのない世界。
それは…何?
痛くて苦しい、おかしな世界じゃない?
「…羅沙!行くな!」
背後からは竜王様からの引き止める声がする。
しかし、ぽめがなかなか顔から剥がれず、体を鷲掴み、引っ張って剝がそうと必死だ。
やっと離れたと思ったら、今度は口をペロペロされていて、竜王様はまた「ぎゃああ!…キモっ!やめろ!……ぶふっ」と悲痛な雄叫びをあげて吹き出している。
口?!ああぁぁ…ぽめ!
後ろに退がれば、また痛くて苦しい世界。
「ぶひゃひゃ。ぽめもイケメン大好きだなー?チューしとるわチュー!」
目の前の、この手を取れば。
まだ見たことのない、ワクワクの世界。



