「…ですので、この婚約…どうか無かったことにして下さいっ…こんな未熟で勝手な私に、八部衆の王妃なんて務まりませんっ…どうか、どうかお願いしますっ…」
そう言って、御理解を得るためにも渾身の思いでバッと頭を下げる。
もう、声が震えて顔を上げてられないのもあるけど。
もう、辛い痛いことから…逃げたいんだ。
「…羅沙」
名前を呼ばれて顔を上げた途端、グッと腕を引っ張られる。
体が揺れて「わっ!」と声をあげてしまった。
何?!と、思う間もなく、竜王様の神妙な顔がさっきよりも目の前にある。
「え?え?」
「羅沙、やっぱり話そう。君にはいくつか説明しなくてはならないことがある」
「へぇっ?!」
変な声が出た。
と、思ったら「こっち」と竜王様に腕をグイグイと引っ張られて、足を進めさせられていた。
「ち、ちょっと待って下さい!せ、説明なんていりません!」
もう、わかりきったことでしょう?!
「…いや、説明じゃない。言い訳、弁解」
「言い訳って…竜王様は何も悪くないですよ!…もういいんです!…離して下さい!」



