「きゃんぷ?何それ」
首を傾げながら正直に疑問を口にすると、豹牙は不敵な笑みを浮かべている。
「おー。キャンプってのはな?人間界の娯楽でよ?」
「人間界の?!」
「要は野営よ。野営」
「………」
野営…。
その一言を耳にすると、私の頭の中には良くない思い出が広がり始めた。
寒い、痛い、痛い、寂しい、腹減り、泥棒、転売、寒い、股が痛い、辛い、妖精…。
「い、行かない…」
「え?何で?」
「だって野営でしょ?…野営はもう勘弁して…」
思い出してはげんなりする。死と隣り合わせの壮絶な日々を。
しかし、この男はまたしても「がはは!」と大爆笑している。
笑い事じゃないのに…!
「このあほ。おまえの送った野ざらし野営じゃねえよ。人間界にはな?野営を楽しむための快適な道具があんだよ」
「………」
野営が快適?
あんな死にそうな生活に快適も何もありますか。
もういや。絶対に嫌。野営なんて。
野営が娯楽って何?人間界不思議。
「…行かない」
「おいおいおいおーい。絶対楽しいからって!キャンプは旅、旅は出会い、成長、ロマンの連続だぜー?!」
「…行かないっ!野営はもう嫌!」



