「すみれ、あっちで2人で話そう」


困ったような声で言う理人さんは、さすがに動揺しているみたいな気もする。


「やだやだ、知らない」


ぶんぶん頭を振って、手の甲で涙を拭った。


「あ、あのう。すみません。私、教育実習の大崎と言います。桜木先生の奥さん、誤解なんです」


おずおずと、さっき理人さんの隣にいた女の人が私の前に出てきた。


大学生くらいのドキッとするくらいに綺麗な人で、わりと胸が大きくて色気のある人。


「私が、お店の場所がわからないから送ってきてもらったんです。桜木先生は、飲み会に少しだけ顔を出して宿直に戻られる予定でした」