当時の私は、自分の片思いと物語の中の六条さんを重ねて、可哀想だななんて泣きそうになりながら読んでいたっけ。


叶わぬ恋に身を焦がし、最後は潔く諦めて伊勢に下ろうとする六条御息所。


10代の感受性の鋭かった時の私は、今よりもっと泣き虫で、震える思いで桜木先生の答えを聞いていたの。


「強い気持ちで人を愛すると、時には狂ってしまうこともあると思う。本当に誰かを愛するようになったら、君たちにもわかるんじゃないかな」


彼のその答えは、多感な女子高生達の心を高揚させるには充分で。


「それに、僕ならこんなに強く人を愛する女性を、可愛いと思うかな」