「結城（ゆうき）さんじゃないのー？まあ、お久しぶり」


旧姓で呼ばれた方を見れば、思わず笑みが浮かんだ。


高校３年の時の担任の安川先生が、一番はじめに気づいてくれた。安川先生は40代くらいのふくよかで、優しい先生だ。


「まあまあ、綺麗なお嬢さんになって。結婚式のお写真も見せてもらったわよ。良かったわね。夢が叶って」


「はい、先生。私のことを覚えててくれたんですね。嬉しいです」


「そりゃ、忘れないわよ。あなたには桜木先生のことで何回も相談されたんだもん。将来の夢は、桜木先生のお嫁さんになることって、言ってたじゃない。良くも悪くも、あなたほど個性的な生徒は初めてだったわ」


「ハハハ、言ってました、確かに」


「100回告白しても諦めなかって話はもはや伝説よ」