あの月が丸くなるまで

「何よ、ずるいじゃない。私より先に夢を叶えるなんて……っ!」

 ふいに、上坂が後ろから私を抱きしめた。熱い体温をうなじに感じて、私の体温も一気に上がる。



「卒業式の日に言った俺の言葉……覚えている?」

「……うん」

「まだ、誰のものでもない?」

「うん」

 あの言葉を守ったわけじゃない。でも、上坂以上に、私の心に入り込んでくる男がいなかっただけ。ただ、それだけ。

 なんて……自分をごまかす必要も、今はもう、ないのかな。


「よかった……」

 私の肩口で、上坂は盛大にため息をついた。