あの月が丸くなるまで

 そういえばこれ、後ろから抱きしめられているみたいな恰好だわね。でも、全然どきどきしない。 

 私をどきどきさせることができるのは、多分、たった一人だけ。

「なにばかなこと言ってんのよ、酔っぱらい」

「酔ってねえって。俺……」

「美希、電話」

 ふいに向こうの山口と話していた冴子が、私の携帯を差し出した。冴子の後ろに私のバッグ置いてあったから、バイブに気が付いてくれたらしい。

 受け取って表示された名前を見た私の心臓が、どくん、と跳ね上がる。

 私は、あわてて仁田の腕をほどいて立ち上がった。

「ちょっと、ごめん」