「自分を甘やかして、最初の目標をさげることはしたくないの。今は、そのことだけ考えたい」

「お前は、本当に真面目だなあ」

 私は、思い切り眉をひそめて拓兄を仰ぎ見た。拓兄にまで言われた。拓兄は、目を細めて笑っていた。


「まったく。あいつ、こんな意固地な娘のどこがいいのかな」

「私もそう思う」

「拓巳」

 莉奈さんにいなされて、拓兄が、ぶ、とふくれた。二人のやり取りが微笑ましくて、つい私にも笑みが浮かぶ。



 涙を拭いて顔をあげると、目の前の空に月が上りかけているのが見えた。まだ完全な丸になりきれていない、不完全な丸い月が。