暫くして。


 お昼に希歩が作ってくれたのは、焼き魚だった。

 鮭を焼いて、美味しそうな卵焼きに、じゃがいもとニンジンを煮たもの。

 そしてお味噌汁と温かいご飯。


「すみません、買い置きの物ばかりですが。どうぞ、召し上がって下さい」


 食卓に並んだ和食を見て、絢も優輝もとても喜んだ目をした。


「ありがとうございます。頂きます」

「頂きます」


 優輝と絢が食べ始めて、希歩も一緒に食べ始めた。


 優輝は絢の魚を、ほぐしてあげている。

 片目が見ずらい絢に、とりやすいように配慮してくれている。



 そんな姿を見ると、希歩はちょっと嬉しさを感じた。



「こんな美味しいお魚、初めて食べたわ。有難う、お母さん」

「い、いえ…」

「和食上手なんだね。いいなぁ、忍君が羨ましい」


 絢も優輝もとても喜んでいる。


 希歩は黙ってご飯を食べていた。


 そんな希歩を、優輝は食べながら見ていた。



 お昼を食べ終わると、絢はとてもご機嫌になった。


「あの、洗い物。僕がやりますよ」

 優輝が食べを終わった食器をシンクに運んでくれる。


「あ、いいえ。私がやりますから」

 と、希歩が食器洗いのスポンジを手にしようとした時、優輝も同時に手を伸ばして…。

 2人の手が重なった。